top of page

レーザー安全に関する規格と必須の安全対策

1.レーザー安全に関する国内外の主要規格(JIS / IEC / ANSI / CE)

  • JIS C 6802 / IEC 60825-1(レーザ製品の安全基準):
    日本のJIS C 6802は、国際規格IEC 60825-1を基に作成されており、波長180 nm〜1 mmのレーザー製品に対するクラス分けや安全要求事項を規定する世界的なベースラインです。

     

  • IEC 60825-4(レーザガード):
    レーザーガードの設計や構造、高出力レーザー使用時の材料情報などを提供する国際規格です。

     

  • ANSI Z136.1 / Z136.8(米国レーザー安全使用規格):
    米国におけるレーザー安全の基本規格(Z136.1)であり、工学的対策、管理的対策、保護具の階層的な適用を定めています。研究・開発・試験環境に特化したZ136.8とともに、実用的な安全プログラムの基準となります。

     

  • OSHA(米国労働安全衛生局)指針:
    職場におけるレーザーの危険性に対する雇用者の義務と安全基準を定めており、日本の厚生労働省の要綱に相当する労働安全の基盤です。

     

  • CE EN 12254 / EN 60825-4(欧州規格):
    レーザー遮へい設備に対する欧州の厳格な安全規格です。KENTEK製のレーザー保護カーテンや金属製バリアはこれらの認証を取得しています。

     

  • NFPA-701 / ASTM E84 / CSFM Title 19(防炎・難燃規格):
    米国の厳しい防炎規格です。KENTEKのFLEX-GUARDカーテンなどはこれらの認証を受けており、火災の危険性を最小限に抑えます。

     

  • 非ビーム障害(LGAC)対策:
    クラス3Bやクラス4のレーザーが対象物質と相互作用する際に発生する有毒ガスや微粒子(LGAC:Laser Generated Airborne Contaminants)の管理も、安全規格における重要な要素です。

2. JIS C 6802「レーザ製品の安全基準」とは

日本の国内規格であるJIS C 6802は、国際規格IEC 60825-1を基に作成された、波長範囲180 nm〜1 mmのレーザー放射を放出するレーザー製品の安全基準です。 この規格の主な目的は以下の通りです。

  • 光学的な放射の危険性の程度に応じて、レーザー製品のクラス分け(安全基準)を導入する。

  • レーザー製品に伴う危険性について、ラベルや取扱説明書によって適切な警告を確実に行う。

  • 適切な予防措置や保護手段を規定し、不必要なレーザー放射への被ばくを最小限に抑え、傷害の可能性を低減する。

lasersafety-image-301-1.jpg

3. 危険性に応じたレーザー機器のクラス分け

JIS C 6802では、レーザー製品の運転中における「被ばく放出レベル」を決定し、それを各クラスの「被ばく放出限界(AEL)」と比較することで、危険度に応じたクラス分けを行っています。

  • クラス1 / クラス1C: クラス1は、運転中にクラス1のAELを超えるレーザー放射を人体に被ばくさせることのない安全なレーザー製品です。クラス1Cは、皮膚などの組織に接触させて用いるよう設計され、目への危険性を技術的手段で防止している製品です。
     

  • クラス1M: 波長302.5 nm〜4000 nmの範囲にあり、裸眼では安全ですが、双眼鏡や望遠鏡などの望遠光学系を用いて観察すると危険になる場合がある製品です。
     

  • クラス2 / クラス2M: 波長400 nm〜700 nm(可視光)の範囲にあり、まばたき等の嫌悪反応によって保護されるため瞬間的な被ばくは安全ですが、意図的にビームをのぞき込むと危険な製品です。2Mは望遠光学系の使用で危険性が増します。

  • クラス3R: 直接のビーム内観察は最大許容露光量(MPE)を超えますが、障害が生じるリスクは比較的小さいとされる製品です。
     

  • クラス3B: 偶然による短時間の露光でも、目への直接のビーム内露光が通常危険となる製品です。
     

  • クラス4: クラス3BのAELを超え、直接ビームや鏡面反射だけでなく、拡散反射の観察も危険となる可能性がある最も危険なクラスです。皮膚への傷害や、火災の危険性も伴います。

クラス
波長及び特性の目安
危険性の評価
安全衛生対策

クラス1

クラス1C

クラス1は運転中に被ばく放出限界(AEL)を超える放射がないもの

クラス1Cは接触モードでのみ運転しAELを超える漏えいがないもの

運転中にAELを超えるレーザ放射を人体に被ばくさせることのない安全なレーザ製品。

特になし。ただし組込形製品の場合、保守・サービス時にパネルを開放すると内部のより高いクラスの放射を被ばくする可能性がある。

クラス1M

波長302.5 nm〜4000 nm

裸眼での観察は長時間でも安全だが、双眼鏡などの望遠光学系を用いて観察すると危険になる場合がある。

レーザー光路の適切な設計・遮へい、適切な終端(※JIS指定機器の場合)。

クラス2

波長400 nm〜700 nm

(可視光)

まばたき等の嫌悪反応によって保護されるため瞬間的な被ばくのときは安全だが、意図的にビームをのぞき込むと危険。

特になし。

クラス2M

波長400 nm〜700 nm

(可視光)

裸眼での瞬間的な被ばくは安全だが、望遠光学系を用いて観察すると危険になる場合がある。

レーザー光路の適切な設計・遮へい、適切な終端(※JIS指定機器の場合)。

クラス3R

波長400 nm〜700 nm(可視光)ではクラス2のAELの5倍以下

直接のビーム内観察はMPEを超えるため危険であるが、障害が生じるリスクは比較的小さい。

(可視光外の場合)レーザー機器管理者の選任、前眼部(角膜、水晶体)等の健康管理、保護眼鏡の着用。

クラス3B

連続波(CW)で最大500 mW以下

目へのビーム内露光が生じると、偶然による短時間の露光でも通常危険。拡散反射光の観察は通常安全。

レーザー管理区域の設定、キー・コントロール、緊急停止スイッチ・シャッターの設置、インターロックシステム等。

クラス4

クラス3BのAELを超えるもの

(高出力)

ビーム内の観察及び皮膚への露光は危険であり、拡散反射の観察も危険となる可能性がある。火災の危険性が伴う場合がある。

クラス3Bの対策に加え、より厳重なレーザー管理区域の区画と立入制限、難燃性素材を用いた作業衣の着用。

4. JIS規格が要求する技術的仕様(安全防御手段)

特にクラス3Bおよびクラス4のレーザーを安全に運用するため、JIS C 6802の第6項では、製造業者およびシステム構築者に対して厳格な技術的仕様を求めています。

  • 保護きょう体(6.2項): クラス1のAELを超えるレーザー放射に対する人体の被ばくを予防するための保護きょう体を備える必要があります。クラス4に相当するエネルギーレベルへの人体の被ばく防止を前提とする場合、合理的に予見可能な単一故障条件の下でも耐えられる設計でなければなりません。
     

  • セーフティインタロック(6.3項): 保守中などにアクセスパネルを取り外した際、規定のAELを超えるレーザー放射に被ばくするおそれがある場合、フェールセーフ機能を持つセーフティインタロックを備えなければなりません。
     

  • リモートインタロックコネクタ(6.4項)と手動再設定(6.5項): クラス3Bおよびクラス4のレーザーシステムは、外部制御器と接続するリモートインタロックコネクタを備え、クラス4システムにおいては、インターロック作動後や停電後に放射を再開するためのマニュアルリセット(手動再設定)機構を組み込まなければなりません。
     

  • 鍵による制御(6.6項): クラス3B及びクラス4のシステムは、無許可の使用を防ぐため、鍵操作による主制御を組み込まなければなりません。
     

  • レーザー放射の放出警告(6.7項): レーザーの電源がオンになった際や放出可能な状態の際、可聴音または可視光による明瞭な警告装置を作動させる必要があります。

5. レーザー安全管理のための必須用語解説

レーザーの安全基準や適切な保護具の選定を理解するために欠かせない、重要な専門用語を解説します。

  • CW(Continuous Wave: 連続波)とパルスレーザ: 0.25秒以上の持続時間の連続出力が得られるレーザーをCW(連続波)と呼びます。一方、エネルギーを単一のパルス又はパルス列の形で放出するものをパルスレーザと呼びます(JIS規格ではパルス幅0.25秒未満)。レーザー放射が障害を引き起こすメカニズムは露光のパルス幅に強く影響され、ナノ秒レベルの短パルスでは熱的影響だけでなく衝撃波による障害なども生じるため、CWとパルスではMPE(最大許容露光量)の計算式や要求される保護具のスペックが大きく異なります。

lasersafty-image-3041-1.jpg
  • LSO(Laser Safety Officer: レーザー安全管理者): レーザーの危険性の評価および管理をするのに十分な知識をもち、レーザー危険性の管理および監督に責任をもつ者です。クラス3R(可視光外)、クラス3B、およびクラス4のレーザー機器を使用する場合、厚生労働省の要綱においても選任が求められており、レーザー管理区域の設定、保護具の点検、安全衛生教育の実施など、現場の安全管理の中核を担います。
     

  • AEL (Accessible Emission Limit: 被ばく放出限界): 対応するクラスで許容される最大の被ばく放出レベルを指します。レーザー機器のクラス分けは、このAELを基準にして決定されます。
     

  • MPE (Maximum Permissible Exposure: 最大許容露光量): 通常の環境下で、人体に照射しても有害な影響を与えることがないレーザー放射のレベルです。レーザーの波長や露光時間によって値が異なり、目や皮膚への障害を防止するための最も重要な基準となります。
     

  • NOHD (Nominal Ocular Hazard Distance: 公称眼障害距離): ビームの放射照度又は放射露光が、角膜上のMPEと等しくなるところまでの距離を指します。この距離より内側の区域(NOHA:公称眼障害区域)では、保護メガネなどの安全対策が必須となります。
     

  • NOHA(Nominal Ocular Hazard Area: 公称眼障害区域): ビームの放射照度又は放射露光が、角膜上のMPEを超えている範囲内の区域を指します。NOHDが危険な「距離」を示すのに対し、NOHAは偶発的な誤射や反射を含めた三次元的な「空間・区域」を示します。この区域内はレーザー管理区域として立入り制限などの措置が必要です。

  • NHZ(Nominal Hazard Zone: 公称危険区域): JIS規格のNOHA(公称眼障害区域)に相当する、米国ANSI規格等で広く用いられる概念です。KENTEK社のレーザー保護カーテン「FLEX-GUARD®」や金属製バリア「EVER-GUARD™」を現場に導入する際、このNHZ(又はNOHA)を正確に評価・囲い込み、適切なレーザー管理区域を設定することが安全環境構築の第一歩となります。
     

  • セーフティインタロックとフェールセーフ: セーフティインタロックとは、保護きょう体の一部を取り外した際などに、クラス3R以上の危険なレーザー放射への被ばくを防ぐために各部分に連結された自動連動装置です。JIS規格では、これらが「フェールセーフ(部品の故障が危険性を増加させないような設計上の考慮)」の機能を持つことを求めています。アステックが三菱電機やキーエンスのPLCを用いて設計・構築する制御盤は、このフェールセーフ要件を確実に満たすための心臓部となります。
     

  • OD (Optical Density: 光学濃度 / 透過濃度): レーザー保護メガネなどが、特定の波長の光をどの程度減衰させるかを示す値です。透過率の逆数の常用対数で定義されます。例えばODが3の場合、透過率は0.1%となり、ODが4の場合は0.01%となります。レーザーの出力がMPEを下回るように、適切なOD値を持つ保護具を選定することが不可欠です。
     

  • VLT(Visible Light Transmission: 可視光透過率): レーザー保護メガネのフィルターが、一般的な可視光をどの程度透過させるかを示す割合です。高い光学濃度(OD値)を確保しつつ、作業に必要な視界の明るさ(VLT)を維持することが重要です。VLTが低すぎると作業箇所が見えず、作業者がメガネを外してしまうといったヒューマンエラーの原因となります。

lasersafety-image-3043-1.jpg
  • LGAC(Laser Generated Airborne Contaminants: レーザー生成浮遊汚染物質): クラス3Bやクラス4のレーザービームが対象物質と相互作用した際に発生する、有害な微粒子、蒸気、有毒ガスなどの総称です。レーザーの安全管理においては、光そのものの危険性だけでなく、ヒューム抽出装置(集塵・排気設備)の導入など、LGACによる非ビーム障害への対策も不可欠です。

資料請求/ご相談/お見積もり依頼

bottom of page